僕の山のパートナー
| 山に登り始めてかれこれ30年が過ぎた。最初は単独行が多かったが、現在所属する山岳会に入ってからは山仲間と苦 |
| 楽を共にする機会が増えた。道内の山や海外の山にまで目が向くようになって、この間は家族のことも忘れて遮二無二登っ |
| ていたような気がする。 |
| 1994年、チベットヒマラヤの高峰に挑んだ後、ちょっと心の中がエアーポケットに落ちたような気がして、それまでのがむ |
| しゃらさが消えてゆとりを持った登山を心がけるようになった。そんな時、ワンコを飼い始めた。大型犬の可愛いヤツで、「コ |
| イツと山に登るのも面白いな」・・・それから僕の山のパートナーはワンコに代わってしまった。 |
| 今じゃ、山仲間と登ることもあるが数えるほどで、どこへ行くにもワンコが僕の横にいる。雪山がほとんどだが、ワンコが |
| そばにいると楽しくて仕方がない。雪穴やテントで寝たり、雪の稜線を歩いたり、雪が深けりゃたまにはラッセルだってしてく |
| れる(まともなラッセルじゃないけれど・・)頼もしいパートナーだ。 |
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エルとの出会い
| 僕が犬と暮らし始めたのは1996年からである。子供の時以来だから何年ぶりのことだろうか。僕の住む北海道東部、オ |
| ホーツク海側の中核都市のペットショップを覗いてみた。いろいろな犬種がいたが、お目当てはゴールデンレトリーバーだっ |
| た。生まれたばかりの女の子がいるというのですぐ手配した。そうやって我が家に迎えたのが、初代のエルだった。 |

ゴールデン・レトリバーのエルはたくさんの思い出を僕に残した (左は冬の斜里岳、右は北大雪・天狗岳で)
| 一歳を過ぎたころから僕の好きな山登りに同行させるようになった。エルは山に入るとまさに伸び伸びと野性味あふれるよ |
| うに走り回った。真冬も僕について冬山に入っていた。山仲間にも歓迎され、雪穴やテント生活を一緒になって楽しんだ。そ |
| んなエルとの暮らしも五年目でピリオドが打たれた。原因はよく分からないが、子犬の時からよく吐いたり下痢をして病院通 |
| いを繰り返していたエルだった。2000年、五歳の夏、エルは僕にたくさんの思い出を残して虹の橋を渡った。 |
| ゴールデンのエルが病死して半年。この間、エルと歩いた山を一つひとつ訪ね歩き、思いでの場所で散骨した。それも一 |
| 区切りつきポッカリと開いた胸の傷みも少しずつだが癒えていた。「またワンと山歩きをしたいな」・・・そんな気持ちが再び湧 |
| いてきて、知人に犬の手配を依頼した。やはりゴールデンが望みであったが、なかなか期待通りにはいかなかった。「ラブラ |
| ドールならいるんだけど」・・知人は言ってくれたが、それでもゴールデンがよかった。エルの記憶が鮮烈であるため、僕には |
| ゴールデンしか目に入らなかったのである。 |
| 「一度ラブに会ってみない」・・・気は進まなかったが、せっかく知人が言ってくれているし「会うだけあってみるか」。僕は摩 |
| 周湖の近くの弟子屈町で生まれたというそのラブに会いに行った。そのワンコは飼い主の車の助手席にちょこんと座ってい |
| た。僕は恐る恐るワンを抱き上げた。目が合い、僕の鼻をペロペロとなめてきた。どんな犬種も子犬はとてもかわいい。僕の |
| ハートはぐらぐらしていた。「ウチに来るか」・・・ふと口をついて出た。2001年3月初めのことだった。 |
| 名前はゴールデンと同じエルにした。それしか思いつかなかった。雪解け後、近くの野山に連れて行った。前へ後ろへと |
| よく走る。ふきのとうを見つけてはかじりついた。小枝や太い枝も口にくわえて走り回った。ゴールデンのエルと比べると、とっ |
| ても元気な女の子だった。秋にはもうどこでも登れるような体になっていた。「そろそろ連れて行くか」・・・まずは低い山から。 |
| こうしてゴールデンからバトンを受け継いだラブラドール犬「エル」が僕の新しいパートナーになった。 |


